兵庫陶芸美術館

工房から車で60分のところにある、兵庫陶芸美術館に行ってきました。
兵庫陶芸美術館は、兵庫県篠山市今田町にある、地元では立杭焼きと呼ばれている丹波焼の窯元が、60軒近く立ち並ぶ地域の中心にあります。
木の器を作っていると、以前から陶芸にも興味があり、工房から近いこともあって時々訪問しています。陶芸の集落の風情もあって、なかなか雰囲気のあるお気に入りの場所のひとつです。
陶芸美術館は、まだ出来て間もない新しい施設ですが、古典的なものからコンテンポラリーな作品まで幅広く企画され、いろいろ作品づくりの上で、刺激を受けることができます。ちょうどバレンタインウィークのイベントとして、入場者に窯元から提供された小皿のプレゼントがあって、とても得した気分になりました。
今回は、時間の関係で美術館だけで、窯元を巡ることはできなかったのが残念ですが、私たちにとって近くて良いところ、また落ちついたらゆっくりと訪ねたいと思います。

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新子 薫さんの杓子

もう20年ほど前になりますが、木の器作りに興味を持ち始めたころ、百貨店の手作り品の実演販売で、新子薫さんの栗の木で作った杓子に出会いました。栗の木を独特の刃物で勢い良く削り、ざっくりと削られた跡が美しく、それでいて機能的な杓子にひきつけられました。
この杓子は何も塗装はしない素のままで、栗の木は水に強く丈夫なため、使い続けると、黒く渋い色あいに変わり、木の道具の良さを味わうことができます。
新子薫さんは、奈良県吉野地方で作られていた、茶粥などをすくう杓子を作る木地師をされておられた方ですが、戦後、プラスチックや金属の杓子の出現に需要が激減したため、木地師の方はほとんどおられなくなる中で、おひとり続けてこられた方でした。
杓子以外にも、皿や鉢などどれも、栗の木の刳り物で、よく切れる刃物で、澱みなく入れられた刃物の跡が美しく、とても魅了的です。
ある日、新子さんの作品を販売されている奈良県内お店で、新子さんの作品はほんとにいいものですねとお店の方と意気投合していると、売り物じゃないけどと言って、店の奥から、新子薫さんが彫られた、神楽で使うような栗の木のお面を見せてくださった。これがまたすごく良くて感激しました。

写真の上の杓子は、私たちが長年使っているものですが、傷みも無く、独特の色合いになっています。
写真の下の大きな杓子は、時代や作者は定かではありませんが、古道具屋で買ったものです。同じ吉野の木地師の方が作られたものだと思います。使い込まれて渋い味わいになっています。
現在はお孫さんがその伝統を受け継がれておられるようです。

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菓子木型

木を扱う仕事をしていると、古い木製の道具にはとても興味を覚えます。
使い込んだ木製品などを見ると、つい買ってしまいます。
そんなことで、いつの間にか集まってきたのが、菓子木型。とりわけコレクションをしている訳ではないのですが、その図柄の面白さと、巧みな木工細工にはとても魅力を感じます。
菓子木型は、落雁などの干菓子や練り物などの生菓子を作る際に用いられる、和菓子づくりのための型です。
お正月でもあるので、持っている菓子木型から、おめでたい図柄のものを紹介します。どちらもかなり以前に使われた古いものです。
写真の上のものは、「鯛」の型で、おめでたい場で用いられるお菓子の定番と言えるものです。
写真の下のものは、「福良雀(ふくらすずめ)」と呼ばれる図柄で、雀が丸々と太っている姿から「膨ら雀」を「福良雀」として、その年の豊作を意味し、五穀豊穣のおめでたいものとされています。
この菓子木型にデザインされた福良雀は、単純化されたデザインが愛らしいお気に入りです。
菓子木型は、桜などの材を左右、凸凹を逆に彫る高度な木工技術が必要で、今では、作る職人さんは、非常に少なくなっているとのことです。

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土川昇一さんの「めんぱ」

木の器作りに興味を持ち始めたころ、木曽漆器の産地を旅したことがありました。もうかなり以前のことです。
長野県の旧中仙道の宿場町、平沢から奈良井にかけては、木曽漆器の産地であると同時に、宿場町の風情の残る大変魅力的なところで、行ってみたいところでした。
2月上旬ごろの平日だったと思います。奈良井宿も観光客がほとんどおらず、寒々として本当にひっそりとしていました。
通りにあった、桧を曲げて作られた、漆器の並ぶ小さな間口の店に思わず引き込まれ、入っていきました。
そこは、木曽桧を曲げて器を作る曲物の職人さん、土川昇一さんのお店でした。
土川さんは、寒いこの時期は作ってないんだ。と言われ仕事を見ることはできませんでしたが、店の奥の作業場に通され、奥さんに入れていただいたお茶を飲みながら、仕事のことなどいろいろな話を聞かせていただきました。今日の宿は特に決めていないと言うと、親戚の方がされていると言う、数軒となりの民宿を紹介してもらい、宿泊しました。もちろん宿の泊り客は私ひとりですが、歓待していただきました。
そしてその時、とても気に入って買ったのが、中蓋付の「めんぱ」。
サラリーマン時代は、これを弁当箱として長く使っていました。物珍しげなまなざしも多かったですが、私はひとり悦に入って、とても気に入っていました。
素朴ですが、精巧な造りと、堅牢な仕上がりは、本当にすばらしいものだと思います。

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三木金物まつり2013に行ってきました

11月2日、3日と開催される「三木金物まつり2013」の初日に行ってきました。
例年どおり非常に多くの来場者が会場を埋め尽くしていました。
お目当ての木工道具類を販売するメーカーさん、鍛冶屋さんの屋内ブースが、今年は2会場に別れたことから、屋内会場は比較的ゆったりしていて、混雑が少なくなっているように感じました。
例年は、三木勤労者体育センターにすべてのメーカーブースが入っていたのですが、今年は、鋸、鑿、鉋、鏝のブースは少し離れた三木市体育館に分けて設けられています。
親しくさせていただいている鑿の鍛冶屋さんのブースを伺ったところ、ご主人は今、屋外の「金物古式鍛錬」の公開製作の方に行かれているとのことで、直接、道具のお話をすることはできませんでしたが、「金物古式鍛錬」の会場で職人の顔を拝見させていただきました。

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11月2日 3日は三木金物まつり

11月2日(土)3日(日)は、工房の隣町の三木市で「三木金物まつり2013」が開催されます。
会場では、木工に必要な道具類が調達できるので、毎年訪れています。
日本の金物の一大産地のひとつである、三木市のほとんどの鍛冶屋さんや製造メーカーが来られ販売ブースを設けられるので、道具選びには非常に便利な機会です。
ただ近年、三木金物まつりの人気の高まりもあって、全国から非常に沢山の来場者があり、会場周辺は非常に混雑しています。
特に会場へ直接車で行こうとすると、会場隣接の駐車場はすぐ満車状態になり、遠方へ誘導され、かなり歩くことになるのでお勧めできません。
私の経験からすると、会場周辺に無料巡回バスに乗れる駐車場がいくつか設けられるので、午前中の早い時間帯に周辺駐車場に駐車して、巡回バスに乗るのが、意外と早く会場に着けます。それも遅くなると、満車状態となり、駐車場探しに時間がかかることになります。
遅くなった方に穴場の駐車場なのが、国道175号線沿いにある「道の駅みき」。ここは終日満車になることが少ないので、ここから出る巡回バスに乗るのが、確実な手段。ただ会場までのバスの乗車時間が少し長くなります。
当日の駐車場情報は、地元三木市のローカルFM局「FMみっきい」がリアルタイムで駐車場の情報を流しているので、これを参考にされるのがおすすめです。

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アートなアトリエ「破方館」

工房のご近所さんで、工房から車で5分のところに芸術家集団の方が建てられたアトリエ「破方館(はほうかん)」があります。
建物すべてがアート作品と言う感じの場所。私の大好きな場所で、作品作りに行き詰ったり、気分転換に時々訪問しています。
平日は留守のことが多いですが、日曜日にはアーティストの中島 勉さんが創作活動されています。
ともかく建物も建築物ではなくて、巨大なキャンバスと言う感じで、いろいろなアーティストの方が手を入れられて、訪問する度にその表情を変えています。
展示されている、廃材や金属などいろいろな素材で表現された、立体や平面作品のどれもアトリエと一体化していて、私の好みの作品ばかり。時として繰り広げられる、アートパフォーマンスもまた楽し。
私の創作活動のパワースポット「破方館」での興味は尽きません。

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合鹿椀との出逢い

もうかなり以前のことですが、石川県の旧 鳳至郡柳田村に合鹿椀と呼ばれる、江戸時代以前から作られていた古椀があり、私はその写真を見て衝撃を受けました。
そのお椀には、素朴さの中に凛としたたたずまいがあり、それでいて何とも言えない力強さを感じました。
1986年ごろ、趣味の登山に明け暮れ、いつか山や自然の中で暮らしたいと思いをめぐらしながら、どこか移住者を受け入れてくれるような山村はないかと漠然と探していました。その時出会ったのが、石川県の柳田村の特別村民制度。村役場に入会の案内資料を取り寄せた中に、合鹿椀の小さな写真と紹介文がありました。その写真のお椀にこころ魅かれ、漆器の産地である輪島市に近いことから、木の器を作ってみたいと言う思いが重なって、1986年12月に柳田村特別村民となりました。
それから合鹿椀のことが気になり、いろいろ調べましたが、まだ当時はインターネットなどほとんど無い状況で、わずかに紹介された本を頼りに合鹿椀の世界を知るだけでしたが、その魅力に魅かれていきました。
恥かしながら、柳田村特別村民になりましたが、結局一度も柳田村を訪れることもなく、ましてや本物の合鹿椀を目にすることもなく、柳田村から送られてくる物産や村の広報を頼りに、村への思いをはせるだけに終わってしまいました。
しかし合鹿椀との出逢いが、自分で木の器を作るひとつのきっかけとなり、いつか合鹿椀のようなお椀を作ってみたいと強く思うようになりました。

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椀木地のアラガタ

とある古民具を取り扱う店で見つけた椀木地のアラガタ。
アラガタは、木地屋と呼ばれる人たちが、昔お椀を轆轤で挽くため、山の中で伐採した木を斧やチョウナなどで荒木取したお椀のもとになる木。
写真のアラガタは、もちろん完成品ではなく、いつの時代のものかわかりませんが、人力の轆轤にかけられて丸いお椀に整形されたものと思います。
ダイナミックな木のはつり具合と素朴なフォルムに魅かれて、刳りものの器を作っているものとしては、衝動買いしてしまいました。
木の器を作っていると、このアラガタのような力強さや自然なフォルムを表現できないかとよく思います。

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