一枚の板から器を作るとき、出来るだけ板を無駄にしないよう木取をするのですが、どうしても小さな端材が出来てきます。そんな小さな端材で作って楽しいのが豆皿。
気負わず端材にフリーハンドで皿の輪郭を描く。そしてざくざく彫っていく。陶芸で言えば小さな粘土の塊を指先で伸ばしながら、小さな皿のかたちにするように。
出来上がった豆皿に、工房横の畑で採れたそら豆の塩茹でを入れてみました。
お客様から製作依頼をいただいたキッチン用スツールが出来上がったので、納品してきました。
スツールは、足を悪くされたお客様が腰かけて台所仕事をされるようなので、座面は高めに合わせ、お尻が半分乗ったような座り方でも滑りにくいよう椅子の座面中央は、器づくりの要領で丸のみでくぼみを彫り、のみ跡はそのままに作りましました。
移動させやすい軽さにするため針葉樹で部材を作り、強度も考慮して製作しましたが、重量は2.9㎏で出来上がりました。お客様からは楽に移動させられると言っていただけて良かったです。
仕上げは、オイル仕上げにし、台所での水や油からの汚れを少なくするようにしました。
普段は刳りものの器しか作っていないのですが、器づくりのノウハウを取り入れた椅子を喜んでいただけて、とてもよい機会になりました。
木の器を作り始めたずっと以前は、塗装にはニスやウレタンなどを塗っていましたが、あるとき透明の漆の塗られた家具を見て、なんて綺麗だろうと衝撃を受けました。
それからどうしても自分の作った器に漆を塗ってみたくて、漆を塗っているという方に、透明の漆を塗っては拭き取る作業を繰り返し、木地を美しく引き立たせる、拭き漆と言う塗り方の基本的な手ほどきを受け、自分で塗り始めました。しかし実際に自分で塗ってみると、漆にかぶれ、思うように乾かない、発色が悪いなど失敗から試行錯誤を繰り返しました。漆と言う樹液を塗ることは、化学塗料を乾かすという行為とは全く異なり、酵素と言う生き物を固まらせる行為で、うまく付き合えるようになるまでかなり時間がかかりました。しかし木との相性は抜群で、固まると堅牢で自然の産物のため安全であり、何よりも木の個性を美しく引き出す、すばらしい塗料だと思います。
サラリーマンをしていたころは、社会人山岳会に所属し休日のほとんどを山で過ごす日々を送っていました。そんな日々を過ごす中で、いつも山の見えるところで生活したい、木や森に囲まれて暮らしたいと思うようになり、いつかそんな生活ができないかと考えるようになりました。
山の本ばかり読んでいた時に、工業デザイナーの秋岡芳夫氏やオークビレッジの稲本正氏の本と出会い、木の道具の素晴らしさや木と暮らすことの良さを知り、私が漠然と考えていたことがここにあるような気がしました。何か自分でも木で何かできないかと言う思いから、機械や場所がなくても木を手で彫って器をつくることならできるのではないかと言う思いからスタートしたのが、木を手で彫る刳りものの器づくりでした。
それから多くの方の作品に触れ、多くの方のアドバイスや指導を受けながら、ひたすら試行錯誤をくりかえし木の器づくりを続けてきました。とても遠回りをしましたが、昨年サラリーマンを退職し、刳りものの木の器づくりを職業として生活することをスタートしました。