我谷盆(わがたぼん)と呼ばれる、大変美しいお盆がありますが、それに倣って我谷盆風のお盆を彫ってみました。
我谷盆は、石川県の旧 我谷村(わがたにむら)で、江戸時代初期以来、生活具として作られた木地盆で、材は主として栗を用いられ、のみで縁まわりをくりだし、底には丸のみの平行線を刻み付けているところが特色のお盆と言われています。素朴ななかにも、凛とした力強さと美しさの感じられる、大変魅力的なお盆です。
最近は、器の側面に鎬(しのぎ)と呼ばれる細かい彫り跡を残した、器の製作が面白くなって、鎬の器を製作することが増えたことから、お盆の底の面に直線的な彫り跡を刻んだ我谷盆と通じるところがあって、今回、栗の木で何枚か彫ってみました。
我谷盆は、意匠的に彫り跡をつけたというより、生活用具として効率的に製作する過程でできた鑿跡が、そのまま残されて、それが自然な美しさと力強さを、醸し出していると言えるのではないかと思います。
私の彫ったお盆は、どちらかと言うと、意匠的に彫り跡をつけたようなもので、我谷盆というには、ほど遠いものなので、我谷盆風のお盆としました。
もっと研鑽を積んで、我谷盆の魅力に近づけるお盆を彫れるようになりたいものです。