クラフトデザイン協会の解散

私が2007年より所属しておりました、日本クラフトデザイン協会(JCDA)は、2021年6月21日をもって解散いたしました。
1956年の創設以来65年にわたり、公益法人としてクラフトデザインの普及を図り産業の発展と人々の生活文化の向上に寄与することを目的に活動を続けておりましたが、会員の減少等のため法人運営の継続が困難となり、残念ながら解散することになりました。
木の器作りを職業としたい、プロになるにはどうしたらいいかと模索していた時に見に行った、日本クラフトデザイン協会が主催するクラフトの全国公募展「日本クラフト展」の作品に心奪われ、この公募展に入選するレベルになれば、プロになれるんじゃないかと思うようになり、入選を目指しました。
そして何度もこの公募展を見に行き、作品を作り、2001年に念願の初入選を果たすことができました。以後5回の入選の後、クラフトデザイン協会の会員に推挙していただく機会をいただき会員に入会しました。
私はまだそのころは、まったくの素人でしたが、会員のほとんどは有名なプロのクラフト作家の方ばかりで、美術大学の教授や専門学校の講師、世界的に活躍されておられる方も沢山おられ、木の器の世界のとても有名な方も在籍さていました。私は、会員になることにあこがれてはいましたが、圧倒的なレベルの差を感じ、かなり場違いなところに入ったものだと思いました。
それでも会員の方々は皆とても優しく、2012年に脱サラしてプロになった時には、なかなか仕事が無いだろうと言って、グループ展や展示会に誘っていただいたり、ワークショップの仕事をお世話いただいたりと、まったくの独学で素人上がりの私を親身に支援してくださいました。
65年の歴史ある公益社団法人日本クラフトデザイン協会が、私の時代を最後に活動に幕を下ろすことになったことは、とても残念なことですが、いろいろなジャンルの第一線で活躍されている、多くの作家の方と知り会うことができ、いろいろなアドバイスをいただき、展示会などをご一緒できたことは、現在の活動の財産となっています。

ギャラリーPaw 素・布 Vol.2展にて

兵庫県芦屋市にあります、ギャラリーPawで開催の、素・布 Vol.2展を見てきました。
素・布 Vol.2展は、布をテーマとして、様々な作家の方が自由な発想で作られたアート作品を持ち寄っての展示会です。
布をテーマとしていますが、作品は布に限らず、いろいろな素材で表現される布にまつわる作品、布をイメージした作品は、発想や解釈が多様で、思いもよらない表現があったりして、面白い展示会でした。
そして以前から、ギャラリーのオーナーさんから、こちらのギャラリーで展示会をしてみませんかとのお誘いをいただいていたこともあり、お話をさせていただきました。
ギャラリーPawさんは、アートギャラリーとして、多くのアーティストの方が、年間フルに活動されておられるアートギャラリーだけに、私たちのような作品で、ギャラリーの雰囲気に応えられる展示ができるかが難しいところです。
日頃は、ショップの企画展やクラフト系のギャラリーでの個展がほとんどなので、私たちの表現の幅を広げる機会としてとらえ、双方の思いを交換しながら、展示会の実施に向けて相談させていただきました。

雑誌「住む。78号 夏」より

先日販売された雑誌「住む。78号 夏」に私の工房の地元、兵庫県小野市の多鹿治夫鋏製作所さんが紹介されました。
記事は、「ひとり問屋・日野明子、作り手の家を訪ねる 鋏職人 多鹿大輔さん」として「鋏を作り 鋏を使う家」という記事で掲載されました。
大変質の高いラシャ鋏を製造されておられ、「TAjiKA」と言うブランド名でも人気の、新しい鋏を製造されておられます。
私は、工房をお訪ねしたこともお会いしたことも無いのですが、地元でも意外と知られていない地場産業を堅実に守り、非常にクオリティの高い鋏を作られている方と、スタイリッシュで洗練されたお住まいがあることを知ることができたことをとても嬉しく思います。
余談ですが、この記事の取材の折、編集長の伊藤さんが、取材が終わって時間があったら帰りに工房えらむに寄りますと連絡があって、今回は取材とは関係なく、まったくプライベートに工房に、日野さん、カメラマンさんとともに、東京に戻る忙しい中、工房に立ち寄ってくださいました。
私の工房は、材木と山積みの段ボール箱で、ごじゃごじゃ状態。2階の工房ギャラリーもほとんど、場末の古道具屋状態で、多鹿鋏製作所さんとのギャップに戸惑われたことと思います。
この時、日野さんがNHKワールドのテレビ番組で、日本の金継ぎを紹介する番組に関わっておられて、番組中で金継ぎをする草刈正雄さんが使用する金継ぎ用の道具入れを探しておられて、工房で販売していた古道具のブリキの缶を、これが使えそうだと購入したいただきました。
後日、日野さんからテレビ番組の案内をいただき、見せていただいたところ、ほんの少しですが、購入いただいた古いブリキ缶が映っており、少しはお役に立てたのかなと思いました。

2021年7月2日 | カテゴリー : 作家の方々 | 投稿者 : えらむ

書籍「日本のクラフト もの くらし いのち」

先日、「日本のクラフト もの くらし いのち」と言う本を購入しました。
この本は、私が現在所属している、公益社団法人日本クラフトデザイン協会の創設30周年を記念して、出版された本です。
実際この本が出版されたのは、1986年です。
公益社団法人日本クラフトデザイン協会は、1956年に創設され、1976年に社団法人として許可を取得し、2013年に公益社団法人としての認定を受けました。クラフトデザインの普及を図り、産業の発展と人々の生活文化的向上に寄与することを目的に、半世紀近く日本のクラフトデザインの中心的役割を担い、活動を行っております。クラフト関連の組織として唯一法人化された全国組織で、スタジオクラフトマンや伝統的地場産業に関わる生産者を中心とした正会員、賛助個人会員、賛助法人会員、会友により構成されている組織なのです。
私が、当協会が主催している公募展「日本クラフト展」に5回の入選を果たして、会員に推挙いただいたのが、2007年なので、かなり古い本ではあるのですが、私がクラフトに携わる以前の、日本のクラフト運動の初期から黎明期にかけての、活動を記した貴重な本だと思います。
本には、克明に当時クラフト製作にかかわっておられた方々の作品や証言が、沢山記録されていて、現在著名な作家の方々がこの協会で活動されていたことが良く分かります。
この本を、なぜ今買ったかと言うと、65年の歴史を持つ日本クラフトデザイン協会が、役割を終え、今年で解散予定となり、在庫の書籍が、安く販売されたと言う理由です。
協会とのこれまでの関わりについては、また後日詳しくお話したいと思いますが、とても残念なことです。

久しぶりのギャラリー巡り

今日は午後から、久しぶりのギャラリー巡り。
最初は、兵庫県三木市にある、ギャラリー驟(しゅう)さんで開催されている、「作品展 生木からつくる椅子」展へ。古い付き合いの木工家友達の藤田幸平さんがつくる椅子の展示会。
グリーンウッドと言われ手法で、コナラやアベマキなどの生木を削りながら、木の自然な曲りや表情を生かしながら、作られた椅子です。どれも一点物の手仕事の優しさを感じます。無機質な部屋にこんな椅子がひとつあるだけで、自然な温かみを感じることでしょう。

ギャラリー驟(しゅう) 兵庫県三木市与呂木628
2021年5月12日(水)~23日(日) 10:00~17:00

ギャラリー2軒目は、昨年秋の展示会でお世話になった、明石市のギャラリー風来さんで開催されている「3soku 中村靖夫+中村奈津美 竹と木と布 展」。
康夫さんの竹細工と木工の作品。奈津美さんの手紡ぎ染織による丹波布の作品。どちらも自然素材を使ったとても温かみのある作品です。とりわけ康夫さんの作られた竹かごを以前購入して、愛用していることから、今回の展示会では、新たな竹籠が欲しくて、新しい籠を迎え入れることにしました。

ギャラリー風来 兵庫県明石市天文町1-7-9
2021年5月15日(土)~23日(日) 11:00~18:00(最終日は17:00まで)

 

2021年5月19日 | カテゴリー : 作家の方々 | 投稿者 : えらむ

宮崎興二の4次元ミュージアム展

先日、工房から30分のところにある西脇市岡之山美術館で開催されていた「宮崎興二の4次元ミュージアム展」を見てきました。
アートとサイエンスをつなぐ多面体や多次元のかたちの研究で国際的に知られている、宮崎興二さんの展示会です。
美術館に入ると、「夢幻次元のパノラマ」と名付けられた、独特の視点と感性で制作された作品などで展示会場は、独特の雰囲気につつまれるのですが、これが何とも私には心地良い空間でした。
これまで、いろいろな美術館や個展を見てきましたが、これほど気持ちがリラックスできる独特の空間に誘われたことは無かったと思います。
作品から伝えられること、伝わるもの、表現によってこれほどの空間ができるものかと、いろいろ感じる時間を過ごしました。
私も作品のジャンルは違えど、作った作品を使い手の方へ届ける仕事をしていますが、わずかでもいろんな思いや心地良い感覚を届けることができないだろうかと、思いを新たにしました。
※写真撮影は許可されていました。

2020年12月7日 | カテゴリー : 作家の方々 | 投稿者 : えらむ

森口信一さんの器

写真の器は、森口信一さんの展示会を見に行った時に買った、森口さんが彫られた栗の木の器です。
森口さんは、石川県の大聖寺川の谷あいにあった我谷村の、ダムに沈んだその村で日々の暮らしの道具として作られていた我谷盆を研究され、復興の一人者として我谷盆を作り続けおられる方です。
展示されていた、野性味と美しさを兼ね備えた我谷盆は、本当にすばらしいものでした。
我谷盆と一緒に並べられていた、小さな栗の器、写真の器もとても心惹かれるものでした。栗の丸太をくさびで割ったと思われる表情と、その形状を生かしながら鑿を入れて、なすがままの自然な表情の姿の器にとても魅かれ購入しました。
この森口さんの器を見ていると、私の器作りは、木との対話と言いながらも、あざとく良く見せようと言う思いばかりが出ているように感じます。
会場にいらっしゃった森口さんに、私も木の器作りをしていることをお伝えすると、本当に丁寧に我谷盆のこと、具体的な技法のこと、漆の塗り方のことなど、何ら臆することなく、私に教えてくださいました。
この器を見るたびに、森口さんの木から感じるものを器にする心、人と接するこころに触れ、これからの私の木の器作りをどうすべきかに思いを巡らせています。

 

 

 

 

 

 

 

2020年11月25日 | カテゴリー : 作家の方々 | 投稿者 : えらむ

サンドブラスト初体験

先日、友達のガラス作家 藤本悦子さんが兵庫県加古川市で運営しているサンドブラストのガラス工房「Glass Garden」を訪ねて来ました。
そしてサンドブラストの初体験により作品を制作しました。
サンドブラストは、圧縮空気でガラスの表面に砂を吹き付けることによって彫刻する技法のことで、クリスタルグラスをはじめ、数層の色ガラスを重ねた外被せガラスを彫刻することで、も趣のある作品を創ることができます。
作家の藤本悦子さんは、サンドブラストガラス工芸の創始者で世界の第一人者の竹内洪氏に師事され、大変多彩で美しいガラス工芸作品を作られています。
藤本さんは、サンドブラストの講座も開いておられ、私も初心者向けのサンドブラストの体験をさせてもらいました。
既製のお皿に自身でデザインした模様をお皿の裏側にマスキングし、サンドブラストの機械で彫刻するのですが、デザインとマスキングテープ切りにほとんどの時間を要し、サンドブラストの機械での彫刻は、ほんの数分で終了しました。高度なものは、これを何度も繰り返し、ひとつの作品を作るのに数か月を要するものもあるそうです。
はじめてのサンドブラスト作品は、デザインも出来上がりも、自身の表現がリアルに出て、朴訥とした作品にになりましたが、なかなか面白く、また機会があればやってみたいと思います。
機会がありましたら、ガラス工房「Glass Garden」の講座を受講ください。

「Glass Garden」兵庫県加古川市加古川町粟津249-1 太陽ビル1階
PHONE/FAX 079-423-0303

 

 

 

 

2020年10月20日 | カテゴリー : 作家の方々 | 投稿者 : えらむ

第十回 一脚展+2020を見てきました

現在、神戸市の「竹中大工道具館」で開催されている「第十回 座る・くらべる一脚展+2020」を、隣町の親しくしていただいている木工家の方から、案内をいただいたので見てきました。
会場の竹中大工道具館は、1984年に神戸市中山手に設立された、日本で唯一の大工道具の博物館を、新神戸駅近くの竹中工務店ゆかりの地に移転して新たに開館されている施設の1階ホールですが、都心とは思えない、素晴らしい庭園に囲まれた、落ち着いた佇まいの会場です。
会場には、11名の木工作家が製作された新作の椅子一脚と出展協力者の方の椅子が並べられています。11名の方の椅子は、すべて座ることができ、アンケートにより、デザインや坐り心地を投票できるようになっています。
また、今回は、11名の方のそれぞれの制作過程を映像で紹介されていて、制作過程の一部を実際に見ることができるのは、とても興味深いものでした。
それぞれの椅子と言うものの解釈で、日々の仕事の中から生まれてくる、座り心地と機能性を追求した椅子は、どれも視覚的にも美しく、それぞれの座り心地がありました。
竹中大工道具館は、収集された古い時代の優れた道具や、「道具」を使いこなす「人」の技と知恵や心、そこから生まれる「建築」とそれを取り巻く木の文化について、紹介されており、木工好きにはとても興味深い施設となっています。
展示会は、10月22日まで、開催されています。

 

 

2020年9月17日 | カテゴリー : 作家の方々 | 投稿者 : えらむ

道刃物工業さんが来られました

今日は、親しくしていただいている道刃物工業株式会社の社長さんが、工房に来られました。
道刃物工業さんは、工房の隣町の三木市で彫刻刀や彫刻鑿を作られている会社です。
私が木の器作りを始めた頃に、購入しやすい価格と安定した切れ味と使いやすさが気に入って購入して以来、今も愛用している道具メーカーさんのひとつです。
とりわけ道刃物工業さんには、道具の購入に際しては、先代社長さん、現社長さんともにいつも親身に対応していただいていました。
今日は、最近力を入れておられる、カトラリーや器制作用の刃物の新製品の使い心地や、これからの道具についてのいろいろな話の機会にと来られました。
実際に新作の道具を使わせていただき、いろいろ率直に意見交換させていただくとともに、これまで私が長く使用している道具に対する使い心地、改良してほしいと思う点、新たにあったらいいなと思う道具などについて、気さくに意見交換させていただきました。
直接、道具会社の社長さんにお出でいただいて、私のような名もない末端ユーザーと親身に意見交換していただけたことは、本当にありがたく思います。