5月の下旬になると、確か2009年まで開催されていたクラフトの公募展、「朝日現代クラフト展」に熱心の応募していた頃を思い出します。
およそ30数年前に、独学で始めた木の器製作を職業にしたいと思ったものの、業界経験もなく、教えを乞う人もなく、当時はインターネット環境もほとんどなく、クラフトフェアも松本と丹波ぐらいしか思い当たらず、どうしたものかと思っていました。
プロになるためには、個展をやるか公募展で認められるかぐらいしか思いつきませんでしたが、とても個展をやる力量などなく、とりあえず公募展で技量を試して見ようと。
この頃5月の下旬になると、朝日新聞の夕刊に「朝日現代クラフト展」の受賞作品と講評が大きく記事として取り上げられていました。
コンテンポラリーなクラフトを軸足に置いた公募展でしたが、もうこれは見に行くしかないと、メイン会場の大阪梅田の阪急百貨店にでかけました。
広く薄暗い会場に展示された、巨大とも思えるクラフト作品、そしてありとあらゆる技法で、強いメッセージを発して来るような作品に、これは何だとまた衝撃を受け、会場の雰囲気にのまれながら、ふわふわと見て回った記憶があります。その後数年は、ちょうどバブル期の前後だった頃でもあったせいか、出展作品の購入予約も相当なもので、当時は異様な熱気に包まれていたような気がします。
作品は、コンテンポラリーなものが中心ですが、海外からの応募もあり、伝統工芸を駆使したものや、地場産業の高度な技術を生かしたものなどもあり、挑戦的で斬新な作品等が入賞し、高く評価されていました。
この会場に、自らの作品も並べてみたいと言う強い衝動にかられ、落選を繰り返しながら、1999年に入選を果たし、5年連続で入選することができました。
審査員も、柏木博さん、喜多俊之さん、日比野克彦さんや角偉三郎さんなどもおられ、出品する側も審査する側も、何か熱い熱量のようなもを感じました。
それから、木の器作りを職業にするまでに、かなりの時間を要しましたが、この公募展で感じた熱い思いが今の私の作品に反映されているかと言うと、お恥ずかしい限りです。