土川昇一さんの「めんぱ」

木の器作りに興味を持ち始めたころ、木曽漆器の産地を旅したことがありました。もうかなり以前のことです。
長野県の旧中仙道の宿場町、平沢から奈良井にかけては、木曽漆器の産地であると同時に、宿場町の風情の残る大変魅力的なところで、行ってみたいところでした。
2月上旬ごろの平日だったと思います。奈良井宿も観光客がほとんどおらず、寒々として本当にひっそりとしていました。
通りにあった、桧を曲げて作られた、漆器の並ぶ小さな間口の店に思わず引き込まれ、入っていきました。
そこは、木曽桧を曲げて器を作る曲物の職人さん、土川昇一さんのお店でした。
土川さんは、寒いこの時期は作ってないんだ。と言われ仕事を見ることはできませんでしたが、店の奥の作業場に通され、奥さんに入れていただいたお茶を飲みながら、仕事のことなどいろいろな話を聞かせていただきました。今日の宿は特に決めていないと言うと、親戚の方がされていると言う、数軒となりの民宿を紹介してもらい、宿泊しました。もちろん宿の泊り客は私ひとりですが、歓待していただきました。
そしてその時、とても気に入って買ったのが、中蓋付の「めんぱ」。
サラリーマン時代は、これを弁当箱として長く使っていました。物珍しげなまなざしも多かったですが、私はひとり悦に入って、とても気に入っていました。
素朴ですが、精巧な造りと、堅牢な仕上がりは、本当にすばらしいものだと思います。

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