豆皿とそら豆

一枚の板から器を作るとき、出来るだけ板を無駄にしないよう木取をするのですが、どうしても小さな端材が出来てきます。そんな小さな端材で作って楽しいのが豆皿。
気負わず端材にフリーハンドで皿の輪郭を描く。そしてざくざく彫っていく。陶芸で言えば小さな粘土の塊を指先で伸ばしながら、小さな皿のかたちにするように。

出来上がった豆皿に、工房横の畑で採れたそら豆の塩茹でを入れてみました。

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豆皿 栗材   左:オイル仕上げ  右:拭漆

 

 

秋岡芳夫さんのこと その2

先日、工業デザイナーの秋岡芳夫さんのことを書かせていただきましたが、私は残念ながら秋岡さんとお会いしたことはありません。
しかし、秋岡さんとのことで興味深い思い出があります。
もうかなり以前のことですが、秋岡芳夫さんが審査員長をされておられたクラフトコンテストに応募した時のことです。
その時のコンテストでは入賞できませんでしたが、コンテストの会期終了後、コンテストを運営されておられた方から、入賞者の選考状況についてお話がありました。
大賞など大きな賞がすべて決まり、最後に一番最後の入賞者を決める際、私の作品と、もう一人ほぼ同じコンセプトで製作された作品が候補になったそうです。どちらを入賞者とするか審査員の方々の中で意見が分かれため、最終的に審査員長の秋岡さんの判断にお願いしようということになったそうです。秋岡さんの選定でもう一人の方の作品が入賞と決められ、私は入賞から外れました。同じコンセプトで作られたもう一人の方の作品は、私のものよりシンプルにまとめられた作品でした。私はそのことを聞いて、秋岡さんの選考に妙に納得した、そんな思い出があります。

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秋岡芳夫さんのこと

私が登山に熱中し、何か自然と暮らす仕事がしたいと漠然と思っていた時に、工業デザイナーの秋岡芳夫さんの本に出会いました。もう25年以上も前のことになりますが、秋岡さんの本と出会ったことで本気で木工を職業にしたいと考えるようになったと思います。
入手できる本はいろいろ読みました。本の中には、木のすばらしさ、木の道具を使い込む良さなど、それまでほとんど気づかなかった木のことが紹介されており、目からうろこの出会いでした。
そして工業デザイナーとして、モノには人に合った大きさやサイズがあることを紹介されていました。
私もすぐに本の中に紹介されている日本人に合った座高の椅子と、それに合う高さのテーブルを作って使ってみたところ、楽に座れる、仕事や食事がしやすい、来客用テーブルとしても違和感がないなど、モノのサイズの重要性を実感することになりました。
秋岡さんのことばに、「木はそる、あばれる、狂う、いきているからだから好き。」と言うのがあります。今やっと木の器づくりを職業としていますが、木とどう付き合うかを教えてくれているように思います。今も時々その言葉を思い浮かべながら仕事をしています。
秋岡芳夫さんは1997年に亡くなられました。本当に残念です。

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栃の角皿を彫る

数年前に買って、どう使うか悩んでいた栃の木を彫ることにしました。
板には、節があり、入り皮があり、ひび割れがある。
一般的には良材とは言えないが、でもどこか魅かれるところがあって買ったのは確か。
今回やっと手をつけることにした。節などを避けて使うこともできますが、全体の雰囲気が気に入って買ったのだから、すべてをありのままに受け入れて大、小の角皿として作ることにしました。
木目が入り組んで、彫るのはなかな厄介でした。
過去の経験から厄介な木ほどおもしろいものができると思っているので、楽しみではあるのですが、最終的には漆を施してどんな器になることでしょうか。

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角皿 栃材

 

 

綿の栽培

工房のとなりに畑を借りて、野菜と少しですが綿を栽培しています。
この春に蒔いた綿の種が発芽しました。

工房えらむでは、数年前から和綿、茶綿、緑綿など4種類の綿を栽培し、
自分たちで栽培した綿から糸を紡ぎ布を織る取り組みをしています。
今後も綿の成長にあわせて紹介していきたいと思います。

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椅子の納品

お客様から製作依頼をいただいたキッチン用スツールが出来上がったので、納品してきました。
スツールは、足を悪くされたお客様が腰かけて台所仕事をされるようなので、座面は高めに合わせ、お尻が半分乗ったような座り方でも滑りにくいよう椅子の座面中央は、器づくりの要領で丸のみでくぼみを彫り、のみ跡はそのままに作りましました。
移動させやすい軽さにするため針葉樹で部材を作り、強度も考慮して製作しましたが、重量は2.9㎏で出来上がりました。お客様からは楽に移動させられると言っていただけて良かったです。
仕上げは、オイル仕上げにし、台所での水や油からの汚れを少なくするようにしました。
普段は刳りものの器しか作っていないのですが、器づくりのノウハウを取り入れた椅子を喜んでいただけて、とてもよい機会になりました。

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写真は、オイル塗布前の状態、工房内にて撮影

 

 

椅子をつくる

工房展に来られたお客様から、椅子製作のご注文をいただきました。
私はほとんど器しか作っていないのですが、工房展では以前に作った椅子なども少し展示していたことから、少し足を悪くされたお客様から台所仕事で使う椅子を作ってほしいとのご依頼でした。
ご要望として、座って調理作業のできるシンプルなスツール。軽い移動させやすいものをと言うことでした。
ご希望の座高に合わせて、普段あまり使わない軽い針葉樹で部材を作っています。やはり私の作る家具は器づくりの延長線になるようで、部材を小刀や鑿などで削り出すやり方が合っているようです。

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栗の木のトレー

栗の木でトレーを彫っています。
栗の木は、水に強い腐りにくい木で、かつては家の土台や鉄道の枕木に使われていました。私は、栗の木の軽い割には強い木であることや素朴な木目に魅かれて、多くの器を栗の木で製作しています。
また、栗の木はタンニンを多く含んでいるので、水や鉄分と反応すると赤黒く変色することから、白木のままで長く使用すると、囲炉裏で燻されたような渋い味わいの色になります。これもまた栗の木の魅力と言えるでしょう。

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漆の美しさ

木の器を作り始めたずっと以前は、塗装にはニスやウレタンなどを塗っていましたが、あるとき透明の漆の塗られた家具を見て、なんて綺麗だろうと衝撃を受けました。
それからどうしても自分の作った器に漆を塗ってみたくて、漆を塗っているという方に、透明の漆を塗っては拭き取る作業を繰り返し、木地を美しく引き立たせる、拭き漆と言う塗り方の基本的な手ほどきを受け、自分で塗り始めました。しかし実際に自分で塗ってみると、漆にかぶれ、思うように乾かない、発色が悪いなど失敗から試行錯誤を繰り返しました。漆と言う樹液を塗ることは、化学塗料を乾かすという行為とは全く異なり、酵素と言う生き物を固まらせる行為で、うまく付き合えるようになるまでかなり時間がかかりました。しかし木との相性は抜群で、固まると堅牢で自然の産物のため安全であり、何よりも木の個性を美しく引き出す、すばらしい塗料だと思います。

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欅に拭き漆塗り

お盆を彫る

お客様からのご依頼で、栗の木で丸いお盆を作っています。私の木の器づくりは、材を手で彫って作ります。木工ろくろを持っていないので、この丸いお盆も材料をバンドソーで丸くカットし、のみで内側を彫って作ります。木工ろくろを使うと正確な丸いお盆ができますが、私は手で彫ることが性に合っていて、スローな仕事をやっています。
以前、少し食器の勉強のためにと陶芸を習っていましたが、私の作る木の器は、陶芸で言うところの、「手びねり」の作品のようなもので、焼き物にある指の跡がのみ跡と言ったとことでしょうか。このちょっとしたゆがみのようなものが私には落ち着くのかと思います。

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